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【近況報告】たまには朗読のことについてたっぷりと書いてみる(20231203たかしな記)
2023年 12月 03日 (日) 12:53 | 編集
夜中にスマホの津波注意報に起こされてやや寝不足気味ですが、午前9時には津波注意報も解除され、東京地方のいまは穏やかな晴れの日曜日です。みなさんいかがお過ごしでしょうか。
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さて、今日は朗読をめぐるマニアックな話をたっぷり書くつもりです。お付き合いいただける方だけ目を通していただければと思います。11月某日、エッセイスト森下典子さんご本人の前で『日日是好日(にちにち これこうじつ)―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ―』から「まえがき」をまるごと朗読させていただく機会があり、直接ご感想をいただき、つらつら考えたことなどを記します。
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おっとその前に。朗読繋がりで、先月お知らせした公演情報を再び。みなさんとっくにご存知のことと思いますが、デーモン閣下はミュージシャンとしてだけでなく、朗読家としてもすばらしいパフォーマーです。閣下にぼくの脚本を読んでいただけるのはとても光栄なことです。当日ぼくも観客の一人として客席にいます。気がついたらお声がけください。
↓公演情報・お申し込みはこちらから↓
太鼓と旅して40周年記念
 レナード衛藤×デーモン閣下 音楽&朗読ライブ
 Silently She Dances
 https://leoeto.com/ssd/

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それではいよいよ本題にはいります。テーマは「男が女性一人称のテキストを朗読すること」について。典子さんや他のみなさんとしたやりとりをめぐり考えたことを。
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どういう経緯で森下典子さん(以下典子さんと書かせていただきます)ご本人を前に朗読することになったのかから語り起こすと長くなるので、そこは、はしょります。そういう機会があったとだけお伝えします。場所はこれまでもときどきご案内してきた八王子は都立長沼公園内の歴史ある囲炉裏料理の店「鎌田鳥山」でのできごとです。
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朗読後に典子さんから「男の人の声で聞いて違和感がなかったのは初めてかもしれない」と言っていただき、大変光栄に感じました。その後、じきじきメールもいただき、そこにはもっと詳細に、次のような趣旨のことが書かれていました。
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“自分が書いたと思うからか、朗読者が男性であっても、どこか女性色に聴こえることがある。高階さんの「まえがき」を聴いた時、不思議に女性色に聴こえなかった。それでは「男性色」かと言うと、それも違う。
つまり、まったく性別をとっぱらった、あるいは共通の色。
「日日」は、性別を越えたんだな〜、と感慨深く、大変嬉しかった”
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これはもう、最高のコメントです! これを受けて、お返事を書きながらぼくなりに考えました。
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かれこれ2年以上『飛行機工場の少女たち』の朗読ライブで、たくさんのたくさんの“少女たち”や“母世代となった女性たち”の心情や思索を語ることを重ねてきたことが実を結んだのではないか。
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『飛行機工場の少女たち』の手記の大部分は女性たちによる一人称の思い出の記録です。28年前に女学生だった40代の女性たち。その多くはかつての自分自身と同世代の子どもの母となっていました。それに加えて、高等女学校の先生方や寮に建物を提供した料亭のおかみさん、工場側の人、同窓会開催のきっかけをつくった郵便局長さんなど、年齢も性別もバラエティに富んだ手記を読み進めたことも良かったと思います。
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ぼくは「からだは楽器だ」と考えています(これは“じぶんの声と体で語る”をスローガンに掲げるオンライン道場studio_o3でも、ことあるごとに話しています)。ぼくの(そしてあなたの)からだは世界にただ一つしかありません。つまり、誰もが世界でただ一つの楽器を持っている、ということになります。
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朗読と音楽を重ねてみると、からだは楽器でテキストは楽譜ということになります。
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朗読者は自身のからだという楽器の持ち主であり、同時にそれを演奏する演奏者でもあります。ぼくのレッスンでは楽器のグレードアップをはかりつつ、演奏者としての技術を磨き、最終的にはその人ごとの表現を追求していくことをめざしています。これはぼく自身が朗読をするときに念頭に置いていることそのものです。
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楽器のたとえ話で続けましょう。チェロでバイオリンの音は出せませんが、バイオリン用に書かれた曲をチェロなりに編曲して演奏することはできます。その曲が(曲の楽譜=テキストが)すばらしいものであれば、バイオリン用の曲であっても、チェロなりに演奏することができます。
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朗読に話を戻すと、チェロ(男性の体という楽器)を使って、バイオリン曲(女性一人称のエッセイという楽譜)を演奏する、と言い換えてもいいいでしょう。
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『飛行機工場の少女たち』の朗読ライブでは、そんなふうに、女性たちの手記をたくさんたくさん読み進めてきました。ぼくなりに書き手はどんな楽器の持ち主だったのかをテキストから類推しました。
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「この人はどんな声でしゃべったんだろう? せっかちなのかな? おっとりなのかな? ハキハキしていたのかな? 自信なさそうだったのかな? 剽軽だったのかな? クールだったのかな?」などなど。その楽器はどんな風に響いたのか。書き手のヴォイスを探りながら読むことを心がけてきました。
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もちろんチェロにバイオリンの高音を出すことはできません。なのでチェロなりの演奏方法を探り続けた数年間でもありました。
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結果的に、書き手が男性か女性かにとらわれずぼくなりに“演奏”する、というやり方が身につきました。典子さんに書いていただいた “まったく性別をとっぱらった、あるいは共通の色” という表現は、「そのようであれたら」と願う姿そのものです。読んで、我が意を得たり!と思うと同時に、願った通りに伝わって大変嬉しく感じました(典子さんからは他にも素敵なコメントをいただいたのですが、それはぼくの宝物としてそっと胸にしまいますw)。
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ここに書いたことはたぶん、朗読に限った話ではなく、ほかのいろいろな表現ともつながる話だと思います。ご興味のある方はぜひコメントをお寄せください。こういう話をまったりする場も設けてみたいですね。
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最後に、蛇足ですが、いくつか補足説明を。
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『日日是好日』は黒木華、樹木希林、多部未華子出演の映画でご存知の方も多いと思いますが、原作は「とにかくすごい!」の一言です。基本、言語化不可能なはずのお茶の世界を、ど素人のぼくにもわかるように言語化したこの本は奇跡です。
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映画化の際に典子さんがお茶に関する監修のような立場で撮影現場に巻き込まれた日々の記録も後日譚として抜群に面白く、しかも深い洞察に満ちているのでリンクしておきます。お勧めします。この本のタイトル『青藍の庭にすわる』を決めるタイミングで相談相手として〈職業・話し相手〉をご利用いただいたことも懐かしい思い出です。
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『日日是好日(にちにち これこうじつ)―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ―』(新潮社)
 https://www.shinchosha.co.jp/book/136351/

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映画『日日是好日』公式サイト
 https://www.nichinichimovie.jp

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『青嵐の庭にすわる 「日日是好日」物語』(文藝春秋)
 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163914718

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他にも話したいことはいっぱいあります。防災アルバイターに関して。上にも書いた『飛行機工場の少女たち』朗読、〈職業・話し相手〉、studio_o3のナビゲーター、「遊びBAR」マスター、予防学などあれこれ手を広げすぎてあたふたしていますが、全部この先の後半生を彩る大事なものばかり。【近況報告】でも折々ご紹介させてください。それではまた来月、というか、来月はもう2024年ですね。
少々気が早いですがよいお年を!
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